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2009年4月16日 (木)

博打の郷土玩具

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 カジノで楽しむルーレットは、球がどの数字の枠に入るかを予想し、お互いにチップを賭けて楽しむ遊びですが、こうしたものはどうも日本にもあったようです。写真は湯治場、あるいは遠刈田系こけしで有名な、宮城県遠刈田温泉に伝えられてきたという、「どんころ」の六角独楽です。
 独楽は六角形で、その六面に「富士」「鷹」「茄子」「達磨」「虚無僧」「西行」が描かれています。そして六つの区画に六種類のイラストが描かれた紙は、ルーレットで言うオッズ・テーブルです。一富士、二鷹、三茄子で、アメリカンドリームならぬ、湯治場ドリームを狙うという趣向です。
 遊び方は、まず胴元、つまりオヤと、賭ける人に分かれます。そして、出ると予想する目のイラストのところに賭けていき、胴元が独楽を回し、当った人は掛け金の5倍を受け取ることができます。当らなかった人の掛け分は胴元のものになります。当った人は次の胴元になります。なかなか楽しそうなゲームで、こういう単純なルールの遊びは飲みながら夜やると異常に白熱するものです。温泉地の湯治客も遊んだというのは納得です。
 購入した店の人の話では、これを繰り返していくと、結局のところ誰かが一人勝ちするようなことはなく、何度も遊べばだいたい分配されるのだそうです。つまり、予想できない運によって財を交換し合うことで、人間関係が再構築されるといったところでしょうか。もしかすると賭け事の本質は、あるルールを共有して絆を作るための儀礼的な側面にあって、金儲けの手段ではないかもしれません。最近の経済ニュースを見ていると、自分本位・利益追求の賭け事ほど虚しいものはないのではないかと感じます。
さてこの「どんころ」は、説明書によると、二つの文脈で語られています。ひとつは平家の落人伝説との関連。正月飾りもせず山里に隠れ住む人々が、ひそかな楽しみとして使われたという位置付けです。そしてひとたび「どんころ」を始めると興奮して、お通夜の晩には供養と称して知らぬ人まで集まって興じるとあります。もうひとつは木地屋との関連。山中を移動する木地屋が、夜半に木の切り株の上でこれを楽しんだとあります。どちらの物語も、楽しい「どんころ」の様子が目に浮かびます。
 それが真実であるかどうかは問題ではありません。物語とモノそのものが持つ印象とが合致して、ある郷愁を生むというのが郷土玩具のセオリーでもあり、旅行者はモノを消費しつつ物語を消費し、湯治場という地域のイメージを消尽するわけです。

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