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2009年4月18日 (土)

仙台フィル シーズン・オープニング・コンサート

 関西から仙台に移って驚いたことのひとつが、仙台フィルハーモニー交響楽団の実力の高さ。引っ越した当日にのぞいてみた昨年度最後の定演は、非常に珍しいフランクの交響曲という選曲。しかしその充実した内容に一発ノックアウトで、今日(4/17)はシーズン・オープニング・コンサートに駆けつけました。内容は意気込みたっぷりのオール・チャイコ・プログラム。名曲中の名曲であるヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番でした。
 チャイコフスキーの交響曲第4番は、何枚かCDを持っていますが、小澤征爾―ベルリン・フィルをよく聞いています。チャイコフスキーの後期交響曲のなかでは、第6番「悲愴」に次いで好きですが、家で一番よく聞くのはこの第4番です。第6番は文字どおり悲愴な気分に耐え続けなければならないタフな曲なので、かなり良いコンディションの日でないと聞けません。
 とはいえ、第4番を作った時のチャイコフスキーの精神状態はかなりシビアなもので、衝動的な結婚であったとはいえ離婚直後であったことから神経衰弱となり、スイスで療養していた際に書き上げたものと言われています。そのため、彼自身の心の葛藤と困難からの克服、人間的な成長が、そのまま楽譜に刻まれており、作家にとって転機となった作品です。
 この交響曲は標題音楽としての性格が強く出ています。第一楽章はいわゆる「運命の動機」から始まります。絶望的な現実と淡い夢が交錯する葛藤を描写しています。第二楽章に入るとより悲哀は深まり、鬱屈した気分のなかで気力を失う人間の弱さを、オーボエが中心となって奏でます。第三楽章はロシア民謡の要素を織り込んで、人々の助けを借りながら少しずつ気力を取り戻していく過程が表現されます。フィナーレの第四楽章は、困難を乗り越えて獲得される、新たな自我への無条件の賛美というふうに私はとらえています。ライブで聞くと、CDではわからなかったドルビーサラウンドのような、各楽器へのメロディの振り分けによるうねるような音響効果に驚かされます。また、弦楽パートのチームワークが良いほどうまく響き、木管楽器奏者の個人の力量が曲の印象を決定付けるという特徴があり、凡庸なオーケストラには演奏できないたいへんな曲であることがわかります。仙台フィルは期待以上にこの難問をクリア、拍手喝采でした。
 このように交響曲第4番は、劇的な第一楽章から第二楽章のメロディアスな美しさ、第三楽章のコミカルさ、最終楽章の爆発的な歓喜という、バラエティに富んだ内容を含んでいます。また、「運命の動機」の効果という面からすると、ベートーヴェンの第五番よりもこちらを「運命」と呼びたくなります。いずれにしても、シンフォニーの入門として最適なので、ちょっとクラシック聞いてみたいかなと思っている人には、オススメです。

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